小中学校における集団フッ化物洗口について

大和沢小学校でのフッ化物洗口実施の様子大和沢小学校でのフッ化物洗口実施の様子
大和沢小学校でのフッ化物洗口実施の様子

 弘前市の小中学校ではむし歯の無い子が増える一方でむし歯のとても多い子がいて学校内や地域内での健康の格差が存在します。これを改善するためにフッ化物洗口は、学校で行われる一般的な歯科予防プログラムの一部です。これは小中学校の児童生徒のむし歯予防にとても効果的な方法です。また自分の健康は自分で守るという健康教育にもとても意味があります。

フッ化物洗口の効能・実施する意義

  • 1.むし歯予防:フッ化物洗口は、むし歯の予防に効果的です。フッ化物は歯のエナメル質を強化し、酸による攻撃から歯を守ります。学校でフッ化物洗口を行うことで、子供たちの虫歯リスクを減らし、健康な歯を保つことができます。
  • 2.教育の一環:学校でのフッ化物洗口は、口腔衛生についての意識を高める教育の一環となります。子供たちは歯科医師や保健師から正しいブラッシングの方法や口腔ケアの重要性を学びます。また、フッ化物洗口は毎日の歯磨きの補完として行われるため、歯の健康習慣を育む役割も果たしています。
  • 3.公平性と普及:学校でのフッ化物洗口は、全ての子供たちに均等に提供されるため、公平性と普及の観点から重要です。家庭の環境や経済状況によらず、すべての子供たちが同じ歯科予防プログラムを受けることができます。これにより、地域全体での口腔衛生の向上が図られるとともに、歯の健康格差の是正にも寄与しています。
  • 4.早期発見と治療の機会:学校でのフッ化物洗口は、子供たちの口内状態をチェックする機会でもあります。学校の歯科医師や保健師は、フッ化物洗口の際に子供たちの歯や歯ぐきの健康状態を観察し、早期に異常を発見することができます。必要な場合は、適切な治療や受診のサポートも行われます。

上記のように、学校でのフッ化物洗口はむし歯予防や口腔衛生意識の向上、公平性と普及、早期発見と治療の機会の提供といった意義を持っています。

フッ化物洗口に対しての疑問にお答えする Q&A

Q1.フッ化物はなぜむし歯を予防するのですか?
A.フッ化物は、歯の表面のエナメル質に作用し、細菌が産生する酸に溶けにくい強い歯の質にするなど、さまざまな働きをします。フッ化物は生えたばかりの歯の未熟なエナメル質に作用して、結晶構造が丈夫になるのを早め、むし歯に対する抵抗性を高めます。

  • 1:エナメル質を早期に丈夫な結晶構造にします。生えたばかりのエナメル質の結晶は、すき間や不純物が多く未成熟な状態で、このすき間や不純物があるところが酸に溶けやすくむし歯になりやすいところです。唾液中のカルシウムやリン酸はこのすき間に取り込まれ、不純物と置き換わることで、安定した丈夫な結晶に成熟していきます(成熟現象)。フッ化物はこの成熟の過程を促進することによって、 早期に結晶構造を丈夫にする働きがあります。
  • 2:むし歯になりかかったエナメル質に作用し結晶構造を丈夫にします。むし歯は脱灰と再石灰化のバランスにより引き起こされます。再石灰化が脱灰に優れば、脱灰を始めたエナメル質の部分は再び硬くなり、さらに結晶構造は丈夫になります。フッ化物洗口を行うことにより少量のフッ化物が絶えず供給されるような状況下で、再石灰化が促進され、再石灰化の方が脱灰に優るようになり、むし歯になりにくい環境が保たれるのです。
  • 3:フッ化物は結晶に組み込まれ、フルオロアパタイト結晶を形成します。この結晶は歯の無機質の主成分であるハイドロキシアパタイトよりも科学的に安定しているため、脱灰が起こりにくく、強い丈夫なエナメル質を作ることになります。
  • 4:細菌の活動に必要な酵素の働きを弱めます。
  • 5:細菌に対して静菌的に働き、細菌の酸産生やプラーク形成を抑制します。
Q2.効果としてどのくらいむし歯が減っているのですか?
A.保育所・幼稚園・こども園の年中組から開始し、中学校卒業まで続けると平均で40~60%の予防効果が得られます。フッ化物洗口を実施している新潟県や滋賀県などでは、保育所・幼稚園・こども園からフッ化物洗口を実施した場合、中学校1年生における一人平均むし歯数が約半数になるという報告があります。また、この頃にフッ化物洗口を継続実施した人は大人になってもむし歯が少ないことが確認されています。
Q3.危険性があるという情報があり100%安全ではないのであれば学校に導入することについて心配です
A.フッ素は地球という天体が成立した時から自然界に広く分布している元素であり、私たちが飲んだり食べたりする全ての物に含まれています。私たちは、先祖代々、魚介類や野菜などの食べ物、お茶やビールなどの飲み物から日常的にフッ化物を取り込んで経験してきています。具体的にフッ化物洗口の安全性を考えてみると、仮に誤って1人1回分、保育園児5ml、小・中学生10mlのフッ化物洗口液を飲み込んだ時のフッ化物の量は、園児は2.75mg、小・中学生は9mgです。この量では特別な処置、対処の必要はありません。ちなみに治療が必要となる吐き気などの不快症状が現れる可能性のあるフッ化物の量はというと、年長児、小学1年生くらいの体重20kgではフッ化物量100mg以上を一度に飲み込んだ量となります。その量は年長児で約57人分、小学1年生で22人分の洗口液を一度に飲み込んだ場合に相当します。100mgに達するような事態は起こらないという安全性に配慮した実施法になっています。
Q4.身体へ悪影響が無いか心配です
A.フッ化物洗口を含む各種のフッ化物応用法に関しては、世界で過去60年間の研究データが積み重ねられ、効果、安全性には科学的な根拠があるものとして確立しています。これらの結果を踏まえ、世界保健機関WHOや国際歯科連盟などの国際機関、また日本においても厚生労働省、日本歯科医師会、日本学校歯科医会等の政府および専門団体、日本口腔衛生学会等の学術団体が、フッ化物応用の効果・安全性を確認しフッ化物応用の推進を図っています。
Q5.誤飲をしてしまったらどうなりますか?どのように対応しますか?
A.仮に誤って1人1回分、保育園児5ml、小・中学生10mlのフッ化物洗口液を飲み込んだ時のフッ化物の量は、園児は2.75mg、小・中学生は9mgです。この量では特別な処置、対応の必要はありません。フッ化物洗口後、洗口液を吐き出しても全体量の10~15%の液が口の中に残りますが、その中のフッ化物の量は毎日紅茶を1~2杯飲んだ時にとる量と同じで問題ありません。

人の1日に必要なフッ化物量は2~3mgとされ、6歳で体重が20kgだとしてもそのとき僅かにフッ化物量が上昇するだけで、24時間以内にはほとんどのフッ化物は排出され、体内は通常の至適フッ化物濃度量に戻ります。すなわち1人分10mlを飲み込んでしまっても安全面では全く問題はありません。
Q6.子どものむし歯は年々減少しているのに、なぜフッ化物洗口を学校で行う必要があるのですか?
A.青森県の児童・生徒のむし歯は減少傾向にありますが、依然として全国でもむし歯が多い県の一つ〔多い方から第6位(文部科学省学校保健統計調査/令和3年度)〕となっています。さらに、学年があがるごとにむし歯がある子どもの割合は増加し、高校生では半数を超える生徒にむし歯があります。学齢期にむし歯にかかることは、将来的に歯を失うリスクが高くなります。保育所・幼稚園・こども園、小・中学校において、永久歯が生え始めてくる時期から生えそろうまでの児童・生徒等にフッ化物洗口を実施し習慣化を図ることで、歯質を強くし、むし歯になりにくくすることができます。また、生涯にわたり「自分の健康は自分で守る」という健康意識を高めることもでき、健康教育の一環として取り組むことに意義があります。
Q7.フッ化物洗口をやりたくない子どもや保護者もいると考えられます。フッ化物洗口をする子どもとしない子どもへは、どのような配慮をすればよいのでしょうか?
A.実施についての選択は自由です。ただし、それによる差別や偏見ができるだけ生じないよう事前の十分な説明と同意を得る必要があります。また、実施しない選択をした子どもには同じように真水で洗口するなどの工夫が必要です。

青森県庁ホームページ〔フッ化物洗口について〕へのリンク

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